蝉しぐれ
藤沢周平

1927年12月26日、山形県東田川郡黄金村(現在の鶴岡市)に生まれる。46年、山形師範学校に入学。同人誌『碎氷船』の発行に参加。49年に山形師範学校を卒業後は、教師として山形県西田川郡湯田川村立湯田川中学校に赴任。国語と社会を教える。51年2月、『碎氷船』をひきつぐ同人誌『プレリュウド』を発行。3月、肺結核が発見され、休職。鶴岡市内の病院で半年にわたる闘病生活をおくることに。53年2月に上京し、東京都北多摩郡東村山町の病院に入院。同年6月には手術を受け、右肺上葉を切除。その後、2回、補足成形手術を行い、肋骨を5本切除。この年、療養仲間で作った俳句同好会に参加し、静岡の俳誌『海坂』へ投句。6月号に4句掲載される。

7年近い結核療養を体験し、57年11月に退院。以後、いくつかの業界新聞社で働くが厳しい生活が続く。59年に結婚。業界紙の編集に携わりながらも執筆活動をはじめ、63年に讀賣新聞の短編小説賞に応募。その作品『赤い夕日』が選外佳作となる。この年、長女が生まれるが、妻をがんにより失う。69年に再婚。71年に『溟い海』で第38回『オール讀物』新人賞を受賞。この作品が第65回直木賞候補となる。同年、新人賞受賞第1作『囮』を『オール讀物』に発表。この作品が第66回直木賞候補に選ばれる。翌72年に発表した『黒い縄』も第68回直木賞候補となった。73年『暗殺の年輪』が第69回直木賞受賞。最初の作品集『暗殺の年輪』を文藝春秋より刊行。74年、業界新聞を退社。記者、編集者としての14年間に区切りをつけ、作家として本格的に執筆生活をスタートさせる。以後、数々の短編、長篇を発表するも、82年頃から自律神経失調症に悩み、84年には慢性肝炎が発症と、常に厳しい体調の中での執筆生活が続く。85年、直木三十五賞選考委員に就任。86年、『白き瓶』が第20回吉川英治文学賞を受賞。89年には「江戸市井に生きる人々の想いを透徹な筆で描いて現代の読者の心を掴み、時代小説に新しい境地を拓いた」功績により第37回菊池寛賞を受賞。翌90年には『市塵』で芸術選奨文部大臣賞を受賞。94年、朝日賞を受賞。第10回東京都文化賞を受賞。95年、紫綬褒章を受章。96年3月、肺炎のため入院。以後、入退院を繰り返す。最後の作品は『漆の実のみのる国』。絶筆ながらも、衰えを見せなかった力強い文体は最後までファンの心を魅了し続けた。翌97年1月26日、死去。享年69歳。

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―― 『藤沢周平のすべて』(文藝春秋刊) 所収の 「完全年譜 ― 六十九年の生涯」をもとに作成 ――

藤沢周平作品リスト(単行本のみ)

*年号は初版された年です。

73年 『暗殺の年輪』(文藝春秋)
74年 『又蔵の火』(文藝春秋)
『闇の梯子』(文藝春秋)
75年 『檻車墨河を渡る』
(文藝春秋、文庫化にあたり『雲奔る』に改題)
76年 『冤罪』(青樹社)
『暁のひかり』(光風出版)
『逆軍の旗』(青樹社)
『竹光始末』(立風書房)
『時雨のあと』(立風書房)
『義民が駆ける』(中央公論社)
77年 『闇の歯車』(講談社)
『闇の穴』(立風書房)
『喜多川歌麿女絵草紙』(青樹社)
78年 『長門守の陰謀』(立風書房)
『春秋山伏記』(家の光協会)
『一茶』(文藝春秋)
『用心棒日月抄』(新潮社)
79年 『神隠し』(青樹社)
『消えた女』(立風書房)
『回天の門』(文藝春秋)
80年 『驟り雨』(青樹社)
『橋ものがたり』(実業之日本社)
『出合茶屋』(双葉社)
『春秋の檻』(講談社)
『闇の傀儡師』(文藝春秋)
『孤剣』(新潮社)
81年 『隠し剣孤影抄』(文藝春秋)
『隠し剣秋風抄』(文藝春秋)
『夜の橋』(中央公論社)
『時雨みち』(青樹社)
『風雪の檻』(講談社)
『周平独言』(中央公論社)
『霜の朝』(青樹社)
82年 『密謀』上・下(毎日新聞社)
『漆黒の霧の中で』(新潮社)
『愛憎の檻』(講談社)
83年 『よろずや平四郎活人剣 上・盗む子供』(文藝春秋)
『よろずや平四郎活人剣 中・離縁のぞみ』(文藝春秋)
『よろずや平四郎活人剣 下・浮草の女』(文藝春秋)
『人間の檻』(講談社)
『刺客』(新潮社)
『龍を見た男』(青樹社)
84年 『海鳴り』(文藝春秋)
85年 『風の果て』(朝日新聞社)
『決闘の辻』(講談社)
『ささやく河』(新潮社)
『白き瓶』(文藝春秋)
『花のあと』(青樹社)
86年 『小説の周辺』(潮出版社)
87年 『本所しぐれ町物語』(新潮社)
88年 『蝉しぐれ』(文藝春秋)
『たそがれ清兵衛』(新潮社)
89年 『麦屋町昼下がり』(文藝春秋)
『市塵』(講談社)
『三屋清左衛門残日録』(文藝春秋)
91年 『玄鳥』(文藝春秋)
『凶刃』(新潮社)
92年 『天保悪党伝』(角川書店)
『秘太刀馬の骨』(文藝春秋)
94年 『半生の記』(文藝春秋)
95年 『夜消える』(文藝春秋)
96年 『日暮れ竹河岸』(文藝春秋)
97年 『漆の実のみのる国』上・下(文藝春秋)
98年 『静かな木』(新潮社)
『ふるさとへ廻る六部は』(新潮社)
『早春 その他』(文藝春秋)
99年 『藤沢周平句集』(文藝春秋)